「教育と映画」〜映画『ノー・ヴォイス』②〜

映画監督・ストーリーエバンジェリストの古新です。
前回から、私の初監督映画「ノー・ヴォイス」をご紹介しながら、映画を通じた教育のあり方をお伝えしています。

映画「ノー・ヴォイス」

巷には数多くのペットショップが存在します。
ショーウィンドウに並べられいている仔犬や仔猫に目を奪われる方も少なくないことでしょう。
その瞬間に心ときめいて、犬猫を購入したはいいものの、
しつけがうまくできない、散歩に連れていく時間が取れない、面倒臭くなった、などという
飼い主の事情によって、毎年多くの犬猫が捨てられて、保健所で殺処分が行われています。

飼い主の問題以外にも、売れ残ったペットをモノとして廃棄する業者や、
販売目的で犬猫を大量に繁殖させる悪質なブリーダーの存在など、
犬や猫を取り巻くペット業界の裏側には、大変多くの社会の闇が隠されています。

この映画は、ペットショップ以外にも、譲渡会という場所で犬猫を飼うことができることを知ってもらい、
ペットは責任を持って生涯大切にするパートナーであることをドラマとドキュメンタリー二本立てで伝えています。

今までの知識偏重教育では、テストの成績や人から評価されることばかりが重視され、
弱い存在を守ることや思い遣る精神が数値では測れないということで見過ごされてきました。
これは、近代西洋主義的な生産性や効率性、経済合理性を極度に求める資本主義が波及したために、
その影響が教育現場にも影響を及ぼしてしまった結果です。

誰かが勝って、誰かが負けるというような競争原理は、
太平洋戦争で焼け野原になった日本を復興させる際に求められた努力の精神が生み出したものだと考えます。

ですが、現在は、成熟社会になり、モノやテクノロジーに溢れた時代において、
優劣で物事を決めるような発想は限界を迎えています。教育現場においても、
個人主義的な学力では人生は豊かにならないことに気づき始め、
アクティブ・ラーニングや探求学習が急速に広がっているのも、このような時代背景があります。

他者との協調性やコミュケーション力が求められる時代において、人間以外の命の尊さを考え、大切にできる感受性や人間性は、お互いの存在価値を承認し、相互で助け合いながら、社会の課題を解決にしていくマインドにつながるモノだと考えています。

OECDは、不確実性の高い現代を生きる上で、認知スキル以外に、社会情動的スキル(=非認知スキル)の重要性を提唱しています。社会情動的スキルというのは、既存のペーパーテストの点数評価では図ることができない、感情のコントロールや、他者との協調性、やり抜く力といった力を指します(OECD, 2015)。

 認知スキルだけでは現代社会は通用しない

成績で可視化できない人間性を育む上でも、映画の世界観に没入しながら、
日常とは違った視点で、登場人物の感情や状況を考察し、理解を育むことは、
社会情動的スキルを養うことにも繋がり、そのことで、自己と社会との繋がりを意識することができ、
学習に対しての意欲や動機づけが生まれてくるのです。

(次回に続きます)

投稿者プロフィール

古新 舜
古新 舜
「Give Life to Your Story!―物語を動かそう!―」をテーマに、映画と教育の融合を通じて、大人と子供の自己受容感を共に育んでいく共育活動をしている。映画「ノー・ボイス」「あまのがわ」を発表し、「いまダンスをするのは誰だ?」の制作準備中である。 映画監督と並行して研究・教育活動をパラレルでおこなう。文化人類学の視座をもとに、関係性のあり方に着眼して、VUCA時代を生きる上で必要なマインドをわかりやすく発信し続けている。法務省主催の「人権シンポジウム」講演、月刊誌「致知」などメディア出演や講演活動を積極的に行っている。

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